浴衣の長さに気を付ける
男浴衣はそのまま羽織って着るので「着物の長さ」がそのまま着姿となります。短すぎると子供っぽいし、長過ぎると見た目も暑そうだし、カッコ悪い。浴衣の長さがキマるだけでもカッコ良さはグンっとアップします。
着崩れ防止の「紐」を付ける
動いているうちにえり(衿)、すそ(裾)が広がってしまう「着崩れ」。これは予防出来ます。浴衣に4本紐を縫い付けることでほぼ「着崩れ」が無くなります。着崩れないという「安心感」が着姿にゆとりが生まれカッコよく見えます。
背筋を伸ばす
頭の上に林檎を乗せて歩くイメージ。姿勢がイイだけで浴衣はカッコよくなります。直線的な仕立てをされている浴衣は「身体の線」が大事。上から下までその線を1本通すような意識で動くことで劇的にカッコよくなります。
オーダーメイド男浴衣(綿100%)
麻の角帯(麻88%・ポリ12%)/畳地の雪駄
浴衣の長さの目安は「帯を締める前」でくるぶしが隠れる程度。「帯を締めて」くるぶしが出る程度が基準となります。↑私が着たこの浴衣。その基準に当てはめると「少し短め」となります。帯を締めた状態であと2~3cmは長くても良いかと思います。ただこれで外に着て出てカッコ悪いか?というとそんなことはないです。浴衣は長さが短い分には着ていて「涼しく」、見た目にも夏らしい「軽やかな」雰囲気になります。
オーダーメイド男浴衣(麻50%・綿50%)
角帯(綿100%)/畳地の雪駄
こちらの浴衣はどうでしょう?こちらは浴衣の基準からすると「少し長め」ということになります。長さが長いと落ち着いた雰囲気に。でも夏の浴衣だと若干暑苦しさも。
お仕立済み男浴衣(綿100%)LLサイズ(170-180cm)
ピッケクレープU首肌着(綿100%)Lサイズ
ピッケクレープパンツ(綿100%)Lサイズ
私が持っている紐がその「結び紐」です。紐の素材は綿の端切を使って作りました。結べるものなら素材は何でも構いません。紐の色は出来るだけ浴衣の色に近いと何かの弾みで帯から紐が出てしまった時にも目立たなくていいです。紐はミシンで縫い付けてあります。紐の長さは30cmです。
結び紐は全部で4本。右衿の先に1本目、左衿の先に2本目の紐があります。この写真では見えませんが腰の部分の内側に3本目。腰の部分外側に4本目があります。
浴衣の内側、腰の部分に3本目の紐が縫い付けてあります。右衿の1本目の結び紐と腰内側の3本目の結び紐を結びます。
蝶結びでこんな感じです。そして次は左衿。
浴衣の外側、腰の部分に4本目の紐が縫い付けてあります。左衿の2本目の紐と浴衣外側腰部分の4本目を結びます。
蝶結びでこんな感じに。
後ろ姿はこうなります。4本目の紐の取り付け位置こんなところ。
正面からみるとこんな感じです。4本の紐で身体に巻き付いています。もうこの状態でも行動可能。腰紐も必要なし。変な話しですが帯さえも必要のない状態です。帯をギュウギュウに締めてで浴衣を押さえ込む「苦しくて窮屈な着方」から開放されます。もはや帯は飾り。ほどけない程度にユッタリと締めれば十分です。
こうやってササッと締めて。
仕立て上がり男浴衣(綿100%) LLサイズ(170-180cm)
博多角帯(綿100%)
出来上り。4本の紐でキッチリ身体に巻きついてますのでこの状態の着姿がズッと続きます。万が一帯がほどけても下着姿を路上で晒すことは無くなります。帯がストンと下に落ちるだけ。落ち着いて結び直しましょう。
〈注意点〉
1.外側の結び紐の取り付け位置は帯の中に隠れる位置にします。私は一度「紐無し」の状態で帯まで結び「チャコペン」等で隠れる位置をチェックして位置決めし取り付けています。
2.私は紐を縫い付けていますが「安全ピン」で止める程度でも良いかもしれません。帯下に隠れる位置の微調整も可能になります。ただある程度その部分に力が掛かりますので浴衣生地を痛めないよう付け方に工夫してください。
浴衣に「結び紐」をして着崩れを無くす方法は当店のお客様が自主出版された「新世紀 浴衣マニュアル」を参考に致しました。5年以上の着物生活を元に作られた実践の書。結び紐以外にも目からウロコの内容が盛りだくさんです。きものこすぎ店頭にて500円で販売中。(完売致しました)
「姿勢」で浴衣のカッコ良さは大きく左右します。写真のように林檎を頭のてっぺんに乗せているイメージ。そして肩を開き、背筋を伸ばしましょう。
てっぺんの林檎が落ちてしまうような姿勢は駄目。浴衣の長さがピッタリでも、紐を付けて着崩れを防げても全てが台無しになってしまうほど姿勢は重要です。
今、男浴衣はどこでも売っていて帯の結び方など着方はインターネットでいくらでも調べられます。ただ、どう着こなせば男浴衣姿がカッコいいのか(正解なのか)を分からなければ出掛けるのは不安です。呉服屋歴二十数年の私がある程度その「基準」を示して少しでも不安を解消し浴衣デビューのきっかけになってもらえれば嬉しいです。
カッコよさの基準。
最初は見よう見マネで始まった男浴衣も2回3回と着用回数を増やすていくいうちに自分以外の「男浴衣」が目に付くようになります。「あの人はカッコイイな」とか「あれはカッコ悪いな」とか。少しずつ自分のカッコいい判定基準が生まれてくるはずです。
実はここの上げた3つのポイントは「代々伝わる浴衣の常識」とかそんな凄いものでは無く、あくまで「私し小杉が二十数年間浴衣を見て、着て個人的に思うカッコよさ基準」です。
当店に集まる男着物ファンの多くは皆さんお一人お一人「自分の基準(こだわり)」をお持ちになっています。それはとても大切な事だと思います。洋服の世界もこれだけ個人の着こなしで着られている今、浴衣だけが「この形でないといけない!」なんてことはありません。浴衣だって「自分らしさ」を表現していいと思います。
是非その見付けた「カッコ良さの基準」を私にも教えてください。今ここに上げた3つのポイントが皆さんの新しいカッコいい基準に入れ替わるかもしれません。
男浴衣を着る皆さんと一緒に男浴衣をもっと楽しいものに作っていけたら嬉しいです。
埼玉県熊谷市 きものこすぎ店主
小杉 治